Route960
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■ ストーリー

※A4一枚を埋めるように書いたもので、無駄に(本当に無駄に)長いので注意。

ここはとある名もない峠。 通る人も少ない険しいこの峠には、いつからか、不思議な国道が走っているのです。

その名は国道960号。

この国道、片側1車線の舗装道路で険しい峠を一直線に貫いています。 峠道にありがちなヘアピンカーブやつづら折りはありません。一直線です。 最近あたらしくなった国道にはそういう路線も珍しくありませんね。 トンネルと橋を使って、地形と関係なくゆるやかな3次元曲線を描く峠道は、 今や方々に存在します。

ところがこの960号の珍しいところは、一直線なのにも関わらず、 トンネルや橋が一切ないことです。 つまり…おわかりでしょう。地形に沿って激しくアップダウンを繰り返す道路が、 まっすぐに山の中に延びているのです。

地形に完璧に忠実に敷かれた道路は、 一直線とはいえおよそ車が通れる道路ではありません。 車の馬力やブレーキ性能を遙かに凌ぐ急勾配が存在するのです。 そんな坂に阻まれて立往生してしまえば、どうすることもできません。 崖から車が転げてしまうこともあります。 谷底に落下してしまえば、生きて帰ることもかないません。 救助に向かった車もまた事故を起こしてしまうこともありました。

そんなわけで、国道960号を通る車はほとんどありませんでした。 もともと人が通るところでもありませんから、 まったくひっそりとした道路であったのです。 時折、地図だけを見た他所の車がやってきては、 その急勾配に度肝を抜かれて戻っていく、そんな道でありました。 いつのまにか、「酷道960号」というあだ名がついていました。 国道なのにあまりに酷い道路だ、ということだそうです。

ところが最近、この「酷道」にもちらほら人が集まるようになりました。 どうやらあまりの「酷道」ぶりが噂になり、 ちょっとした観光地になっているようなのです。 「もの好き」なのでしょうか、 わざわざこの「酷道」を通るような車も現れはじめました。 はたして、そういう車には事故を起こしてしまうものも多いようですが…

おや、またそんな「もの好き」車がやってきたようです。 オレンジのオープンカー。 ナンバープレートの色からすると軽自動車のようですね。 非力な軽自動車で大丈夫なのでしょうか。 やや、ブレーキもひどい音をたてています。ますます不安です。 しかしオートマチック車のようですから、運転操作は楽でしょうね。 なにしろ一直線ですからハンドル操作はいりません。 アクセルとブレーキさえ操作すればいいのですから。 でもオープンカーじゃ落ちた時に助かりませんよ。

あっ、やっぱり「酷道」に向かったようですよ。 あの車じゃちょっと無謀じゃないかな… ちゃんと「酷道」を走り抜けられたらいいんですけど。



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